仏事には「お斎」という風習があることを皆様はご存知でしょうか?お寺参りや仏事にご縁がない方は馴染みがない言葉かもしれません。
お斎は「おとき」と読み、法事・法要の際に僧侶や参列者に対して感謝の気持ちや、故人を供養する意味として振舞うお食事のことを指すようですが、『かずや』のある地域では葬儀の前に振舞う「お別れのお膳」を指してお斎という言葉をよく耳にします。
お斎という言葉は、正午などの決まった時間に食事をする「斎食(さいじき)」が由来とされており、本来は僧侶の食事を指す言葉だったようですが、今では精進上げ・精進落としなどのお肉・お魚を使用しているお料理を含めた法要後のお食事全般をお斎と総称し、地域性もありますが皆様のお考えも現代的に多様化しているようです。
個人的にお斎と耳にすると、幼少の頃の家族の影響や個人的なお付き合いもあり、法要後にお寺で振舞われるお食事を思い浮かべてしまいます。「おじゅっつぁん(住職)の話を聴いた後のお斎がおいしい」と、足繁くお寺にかよっていた祖母がよく話していたことを今でも覚えています。幼少の頃に私もよく連れられて行っていましたが、よくわからない大人の話とお肉のない料理の印象が強いせいか、祖母の言葉がまったく理解できませんでした。
大人になれば、懇意にしていただいているお寺の法要へ参列する機会も多くあり、振舞われるお斎の美味しさから、幼少時との印象の違いに大変驚いた記憶があります。
当然ながら各お寺には家庭の味があり、仏教婦人会の方々が持ち寄られたお惣菜やお漬物など含めてどちらも大変美味しく、恥ずかしながら何杯もおかわりしておりました。後に私専用の大きい器をご用意いただくお寺もあり、私の苦手な食材を覚えてくださったり、お土産に自作のお漬物を持たせてくださる仏婦の方々と、大変良くしていただいたと今でも頭が下がり、どちらでいただいたお斎も思い出のお斎となっております。
宗派問わず、お寺で振舞われる料理の為にどちらもお肉・お魚は使用されていませんが、後に浄土真宗のお斎はどちらも「お煮しめ」をはじめとした共通の食材があることに気づき、疑問に思いつつもあまりの美味しさに深く考えることはなかったのですが、あるご聴聞の場で使用する食材に意味があることを知りました。
なんでも、お煮しめの具材は
油揚げは「袈裟」
椎茸は 「笠」
ごぼうは「杖」
里芋は 「(親鸞聖人が枕にして休まれた)路傍の石」
人参は 「あかぎれの血」
・・・と、このように食材それぞれに伝道に励まれた当時の親鸞聖人のお姿を表しているとのことでした。
浄土真宗の「御正忌報恩講」は親鸞聖人のご命日を偲ぶ法要として執り行われますが、お斎に使用される食材にも親鸞聖人の御苦労に対する思いが込められてると知ると、大変感慨深く思います。
もしかしたら様々な宗派やお寺でいただくお斎、葬儀や法事の際にいただくお斎、どちらにも様々な意味や思いがあり食材が選ばれているのかもしれません。
今回は浄土真宗の法要の際に振舞われるお斎の内容について触れさせていただきましたが、お寺の法要にご縁がない方がいらっしゃいましたら、ご参列されてはいかがでしょうか?思い出に残るような美味しいお斎に巡り合えるかもしれません。 合掌
かずやコスメディア 田中丈詠