2024.05.1 | コラム |
先日テレビを見ていると、食パンにのせて一緒に焼いて食べるためのお餅が紹介されていました。スライスチーズのような形状で、求肥のように甘い味で、見ていてとてもおいしそうに見えました。福井の特産品で羽二重餅を生産している会社が開発したそうで、新型コロナウイルスが流行したため、観光客が減少したことによる羽二重餅の売り上げ減少を補うべく誕生したそうです。羽二重トーストを試食して感想を伝えられたのが、お寺の住職でした。その住職が「お餅はお供え物として最高のお供え物なのです。」と言われていました。前回のコラムでは、パンを題材にさせていただいたので、今回は「おもち」についてお話します。
お仏壇へのお供え物として、以下の5つが該当します。
・「香」お香を焚く
・「花」ご先祖様の心を慰める
・「灯明」仏の智慧の象徴
・「浄水」心身を清めのどの渇きをいやす
・「飲食」主食
餅はこれらの中の「飲食」に該当します。
最上位の「飲食」でのお供え物は仏飯で、普段から食べているものをお供えする事が大切であるとわかります。
餅は仏飯に次ぐ優先順位となっていて、その後にお菓子果物と続きます。
多くの人が餅を目にする時期の一つに、「お正月」があり、お正月に作る雑煮には、餅を入れて食べる習慣があります。雑煮には山の幸・海の幸がたくさん入っていて、それだけで十分健康になれそうですが、昔の人にとっては、何より楽しみだったのが、雑煮に入れる餅でした。
古くは、餅に稲の神様が宿っていると考えられていた時代があり、特別な食べ物として敬われてきた歴史があります。よく、汁物・うどんなどに入れた餅を「力餅」などと言いますが、実際に「新しい命をいただく」意味合いで、餅が食べられていた時代もあったそうです。
現代のように、スーパーで気軽に餅が食べられるわけではなく、「ハレの日」にしか餅が食べられない時代が長く続いていました。
一口に餅と言っても、日本にはさまざまな種類の餅があり、形も色も違います。餅を仏壇に飾る場合、具体的にはどのようなものを用意すればよいのでしょうか。
お供え物の餅は、鏡餅のような丸い餅が好まれます。原則あんこ等が入っていない餅で、仏壇もしくは仏具にのる量・サイズを選びます。色は白が原則です。三回忌までは白を選びますが、それ以外の法要や祝いの席では紅白の餅を選びます。餅の個数については、仏壇の大きさや、家に足を運ぶ親族の人数など、諸事情を勘案して決めれば問題ありません。
餅は、よほど故人が好きだった場合を除いて、毎日仏壇へ飾るタイプの食べ物ではありません。お餅を仏壇へお供えする時期は、基本的には「お盆・正月・法事の日」です。
餅がお供え物として必要となるタイミングは、ある程度決まっているため、毎日気張って餅をお供えする必要はありません。大事な場面で、必要な数をそろえるように心がければ、ご先祖様に対する礼を失する事は無いと思います。
私たちの生活に昔から存在する餅ですが、こんなにも特別なものであることに驚きました。私の家でも、師走には家族と一緒にお餅をついて、鏡餅を神棚や仏壇にお供えしています。もちろん食べる事も楽しみなのですが、子供たちと楽しく餅つきをすることも、とても有意義な時間となっています。子供たちも自分の子供たちとこのような時間を過ごしてもらえたら嬉しく思います。
つたない文章におつきあいいただき、ありがとうございました。
かずやコスメディア 東 利廣